
2006年の夏に冥王星が惑星の定義から外されて、惑星は水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星の8個となりました。そして、ちょっと大きな望遠鏡で全ての惑星が見られるということになり、国立天文台では公開天文台などを通じて、惑星を全部見ようというキャンペーンをいろいろと実施していましたね。
実際のところ、私は全て見ましたが、水星は、本当に日没直後にしっかり探さないと発見できませんし、天王星や海王星に至っては小さな円盤にしか見えません。明らかに他の恒星とは違いますが「あ、こんなものなのか」っていうのが正直な感想です。 でも、木星や土星はさすがに立派な姿を見せてくれますね。地球の10倍以上ありますからね。天王星や海王星もでかい(地球の4~5倍以上)のですがあまりに遠いために光っていない円盤にしか見えないんですね。 (天王星は青白く、海王星は薄青色に見えます)
惑星を見るとき、何で見ればいい?
惑星は土星までなら目で確認することはできます。でも目で見たときは、他の星と同じように光の点でしかありませんよね。そうなると望遠鏡の登場になると思いますが、できれば初心者は屈折望遠鏡のほうがいいと思います。惑星はそれ自体が非常に明るいので、光の量を心配することはありません。私も見たのですが、20cmの反射望遠鏡より10cmの屈折望遠鏡のほうが、土星の輪の隙間や木星の模様がはっきり見えることがよくあります。これは反射望遠鏡が筒の中が開放されていて空気の揺らぎの影響を直接受けるのに対して屈折望遠鏡は密封されていることから、空気の揺らぎが非常に少ない状態にあるからと考えられます。
空気の揺らぎは反射望遠鏡にすると結構目立ちますよ。
惑星の動きと見え方
惑星は見かけ上ゆっくりと恒星の中を移動していますが、これは地球と同じく太陽の周りを公転しているからに他なりません。
下の図を見てください。これは夜空での惑星の動き(地球の外側を回る惑星)を示した図です。赤色が太陽、水色が地球、そして緑色が惑星の動きです。
惑星が星座の中を西から東に動くのを「順行」といいます。また逆に東から西に動くのを「逆行」といいます。「順行」から「逆行」に移るとき、またその逆に「逆行」から「順行」に移るときはいったん惑星は見かけ上止まりますが、それを「留」といいます。

また惑星の公転軌道はほぼ同じ(準惑星である冥王星はずれていますが・・・)なので、どの惑星も太陽の通り道から大きく外れることはありません。その中で地球から見て太陽と同じ方向にあるときを「合」といい、太陽と反対側にあるときを「衝」と呼んでいます。(下図参照)
ただし水星と金星は内惑星(地球の内側を回る惑星)なので、見かけ上太陽から離れることはなく、衝という概念は存在しません。そして合には「内合」と「外合」とがあります。また、太陽から一番離れた位置を「(東方・西方)最大離角」と呼んでおり、この時期が内惑星を見る好機になります。

見る時期は、外惑星(水星・金星以外の惑星)では「衝」の時期が最適とされています。しかしながら衝の時期は真夜中に対象となる惑星が南中するので、夕方過ぎはまだ南東の空低くという状況だと思います。つまり大気を長い距離惑星の光が横切ってくることになります。先ほども話をしましたが、大気層を長く横切る=空気の揺らぎの影響を受けやすいという状態になり、今ひとつ見えがよくないことになります。でも夜遅くまで起きているのはいやだ・・・そういう場合は時期をずらして観察する(観望する)ことをお勧めします。
特に木星より遠い惑星は衝の時期を過ぎて、1~2ヵ月後・・・早い時間でも南の空にあるとき見るのがいいと思います。
ただし火星については、約2年2か月ごとに来る最接近時に見ましょう。地球のすぐ外側を回っていることから、衝の時期から1ヶ月もすると8割くらいの大きさにしか見えなくなりこともあります。
惑星は、どのように見えるのか
それでは、各惑星がどのように見えるのか見てみましょう。惑星はその名前の通り、星空の中を惑(まど)う星です。毎年、毎月少しずつ位置を変えています。惑星の位置は、このWebでも紹介しますが、国立天文台などをはじめとするWebで紹介されていますので、そちらを参照ください
○水星
水星は、かのガリレオでさえ見たことがないというある意味伝説の惑星に近いですね。これは水星は内惑星であり、太陽に一番近い位置を回っていることから、見かけ上、太陽からほとんど離れていないので、日没直後の西の空が、日の出直前の東の空にしか見えない。となると、東や西の地平線が開けた場所を調べると同時に、日没時に狙うなら東方最大離角、夜明け前を狙うなら西方最大離角の日を国立天文台などのWebで調べて、前後数日間がチャンスとなるでしょう。ただしこの時期も天体の動きによって太陽からの離角が大きかったり小さかったりします。それを考えると、だいたい年に2回程度しかチャンスはありません。…やはり、水星は伝説の惑星なのでしょうか
また、水星は非常に小さい(月の1.4倍程度)ので、望遠鏡でないとその形を見ることは難しいでしょう。また日没直後や日の出前は太陽の影響で明るいので、その中で水星を見つけるのも少々慣れがいります。無事、望遠鏡の視界の中に入れることができたら、そこには薄い灰色~白い小さな三日月を見つけることができるでしょう。

提供:国立天文台(NAOJ)
○金星
金星も水星同様に内惑星(地球の内側を回る惑星)です。しかし水星と異なり見る条件は格段に良くなります。やはり、太陽からの距離があるからでしょうね。(水星が太陽からの距離が約5800万kmに対して、金星は約1億800万km…ちなみに地球は約1億5000万km)でも…内惑星である限り、真夜中に見ることはできません。また夕空にひときわ輝く姿は「宵の明星」、夜明け前に輝く姿は「明けの明星」と言われていることからも、空を見上げれば、だれもが気づく星です。
さて、金星を望遠鏡でみると真ん丸な形には見えず半月~三日月の形に見えるでしょう。例えば夕空で金星を見た場合、地球から遠い位置にあるときは、見かけの大きさは小さくて形は半月に近く、地球に近づくにつれて三日月の形となり、次第に見かけの大きさが大きくなることに気づくと思います。それと同時にだんだん見えだす高度も低くなっているのが分かるでしょう。そのうち太陽と重なって見えなくなり、その後は東の空に「明けの明星」として見えだすのですが、その時は、見かけ上大きな三日月が、少しずつ小さくなりながら半月に近づくようになります。

提供:国立天文台(NAOJ)
また、ごくごく稀に内惑星である水星や金星が太陽面を通過することがあります。最近は2012年に金星の太陽面通過が起きましたが、非常にまれなので、次回は水星は2032年、金星は2117年…って、もういないやんけ!

提供:国立天文台(NAOJ)
○火星
火星は約2年2か月おきに地球に近づきますが、これは地球が火星の内側を早いスピードで公転しているため、約2年2か月ごとに追いつき、追い越すときに見える現象です。ただ、地球の太陽に対する公転軌道が太陽を中心としたほぼ円形であるのに対して、火星は少々歪んでいるので…地球が追い抜く(接近する)場所によって約5600万kmまで近づく大接近と、約1億kmまでしか近づかない小接近があるのです。かつて2003年に史上最大の大接近と騒がれた時は、5575万8000kmでしたが、これでも月の距離の約150倍ですからね。
さて、接近した火星を望遠鏡で見ると、赤い大地に黒い模様…そして極地には極冠といわれる白い地形がみられます。赤い大地は、火星が赤っぽい砂で覆われているためで、これは酸化鉄(赤さび)ではないかと言われています。極地の極冠は、中接近~大接近の時に見ることができますが、これは二酸化炭素の氷(ドライアイス)で覆われているようです。また、この地下には水の氷があるのではと言われていますが、確かなことはわかっていません。2003年の大接近時に経時的に撮られた写真でも、極冠が見えますね。

提供:国立天文台(NAOJ)
ちなみに火星の大接近時は、夏ごろとなり、さそり座のアンタレスと並ぶこともあります。このアンタレスも赤い星ですが、こちらは火星と違い老齢期に入ったおじいさん星…赤色超巨星です。このアンタレスの名前の由来が「アンチ-ターレス」ということから「火星に対抗するもの」とか「火星の敵」と言われていますが、実はアンチには類するものという意味もあり、それから考えれば、火星に似たものとも言えなくはないです。
ま、どっちでもいいかな!
○木星
木星は、夜空に金星に匹敵する明るさで輝く太陽系最大の惑星で、大きさは地球の約11倍、体積は1300倍以上(質量は300倍以上)もあります。望遠鏡で見ても、接近時に6億キロ近く離れているにもかかわらず、堂々とした姿をみせてくれるのは、まさにジュピターの異名にふさわしいかなと思います。

提供:国立天文台(NAOJ)
望遠鏡で見る木星には、2つの大きな茶色い縞模様と、もし運が良ければ大赤斑と呼ばれる赤い渦巻き(望遠鏡では赤い楕円)が見えるかと思います。この縞模様は、木星は10時間という非常に短い時間で自転しているため、東西方向に非常に強い気流があり、それが水素やヘリウムの雲の模様と言われています。また大赤斑は少なくとも300年以上消えることのない巨大な嵐です。今でこそ小さくなりましたが、その大きさは地球数個分に相当します。
また、木星の周りには4つの大きな衛星(月)が見えるでしょう。それぞれイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストと名前がついており、いずれも由来は最高神ジュピターの妾…というか愛人の名前だったとか。英雄色を好むとはまさにこのことかな!?ちなみにこの衛星たち、必ず4つ見えるとは限りませんが、結構動きが速いので、翌日には見えていたりします。
○土星
土星は、観望会で月と並んで人気天体のトップの惑星です。もちろんその理由は、太陽系惑星で唯一見える巨大な輪です。実は、木星、天王星、海王星にも輪があるのですが、これらの輪は望遠鏡はおろか、今まで接近した惑星探査機でも、常時はっきり見えるものではありませんでした。しかし土星の輪は、直径は27万kmと巨大で、輪そのものの幅も地球を4~5個並べたくらいあるため、非常に見やすいのです。下の写真は2023年の土星です。

提供:国立天文台(NAOJ)
しかし土星の輪は約15年に一度、見かけ上見えなくなることになります。これは土星の輪が公転面に対して一定の角度で傾いているのですが、約15年ごと(土星の公転周期の約半分)に地球にたいして真横に位置するため、厚さが100m程度の輪が見かけ上見えなく(非常に見えづらく)なるのです。この事象は、最近では1995年、2009年、2025年に起きています。

提供:国立天文台(NAOJ)
○天王星
天王星は、最も近い時でも地球からの距離は約26億kmで、土星の倍くらい離れています。大きさは地球の4倍程度ですが、距離が離れすぎているので…地球からは大きな望遠鏡を使っても、その模様などを見ることはできません。白~薄青い円盤が見えるくらいで特に面白味はないのですが、地球からの距離を考えるとこんな遠くまで太陽の光が届いている…感動も覚えます。公転周期はおよそ84年です。約7年ごとに黄道星座を1つづつ移動するのですね。

もし機会があれば、望遠鏡で見てみてください。
○海王星
海王星も天王星同様、地球の4倍程度の大きさがあります。しかし距離は約43億5000万kmで天王星の距離のおよそ倍近く遠くにあります。公転周期は約165年で、約14年ごとに黄道星座を1つ移動するようですね。
こちらも望遠鏡では、青い光の円盤にしか見えませんが、やはり海王星…ブルーに輝いているようにも見えます。冥王星が惑星から外された今では、最果ての惑星ですが、口径20cmくらいの望遠鏡の200~300倍くらいで見えるかと思います。機会があれば、ぜひチャレンジしてください。

提供:国立天文台(NAOJ)
(番外編)冥王星
冥王星は、2006年の国際天文学連合で惑星から新しくできた準惑星に区分分けされました。アメリカ人が発見した唯一の惑星だったので、最後までアメリカが反対したとかしなかったとか。。。ただ、冥王星は距離があまりに遠く(約48億km)、そしてあまりに小さい(直径が約2400kmで月より小さい)ので、大きな望遠鏡で見ても恒星と区別はつきません。でも、見てみたいという人は…公開天文台でリクエストしてみてください。(見せてくれるかどうか、見てわかるかどうかは、保証できませんが…)

提供:国立天文台(NAOJ)
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