今見ている天体は、どのくらい前の光?
M44までの距離は577光年(約600光年)、つまり今見ているM44は正確には約600年前の姿です。この頃の日本は室町時代、応仁の乱(1467~1477)は少し後になりますが、室町幕府の力が弱まり始めたころですね。世界史的に見れば、ジャンヌダルクが活躍した時期でもあります。またオスマントルコにより東ローマ帝国が滅ぼされた(1453年)のもこの頃です。
![M11(NGC6705)](https://stardome-momo.com/wp-content/uploads/2023/01/M11.jpg)
天体概要
かに座にある散開星団です。明るい対象なので古くから知られており、紀元前200~300年ごろにはこの天体が見えなくなったら雨の前兆などともいわれていました。そののち、ヒッパルコスが星表に加えました。この星団が星の集まりであることを確認したのは、ガリレオと言われています。1609年に自作の望遠鏡で観測しています。メシエは1760年3月に観測して、カタログに加えています。
愛称となっているプレセぺとは飼葉桶(馬の餌用に草を入れる桶)を意味しており、近くにあるかに座のγ星、δ星がそれぞれ「北の小さなロバ(アセルス-ボリアリス)」、「南の小さなロバ(アセルス‐アウストラウス)」と呼ばれていることからそういう名前にしたのではないでしょうか。ほかにもBeehive(ミツバチの巣)という愛称もあります。
また、この星団は中国では宋の時代に「積屍気(せきしき)」と呼ばれ、死者が集まるところあるいは死者の魂が昇っていくところと考えられていました。
最近のヒッパルコス衛星の観測により、M44までの距離は577光年、年齢はおよそ7億3,000万年とされています。余談ですが、おうし座の顔辺りにあるヒアデス星団と年齢や固有運動が似ているため、両者は同じ星間雲から生まれたのではないかともいわれています。
どんな感じで見えるの?
M44は非常に明るく、見かけの大きさも満月の倍程度あります。かに座は非常に目立たない星座なので、逆にM44からかに座を見つけることができます。しし座とふたご座のほぼ真ん中くらいにかに座はあります。そのあたりを双眼鏡で探してみましょう。何度も書いてしまいますが、散開星団は双眼鏡に限ります。まずは双眼鏡で眺めてみましょう。オペラグラスでもよいです。それで見ると、数個はオレンジ~赤色っぽい星が見えており、それほど新しい星団ではないということがわかるでしょう。また、二重星なども見受けられるという報告もあるようです。
8~10㎝以上の望遠鏡なら、低倍率で星団そのものを楽しむのもよし、思い切って高倍率にしてその中の星の姿を見てみるのもよしと多様な楽しみ方ができるのではないかと思います。
ふっくんの感想と一言
![ふっくん](https://stardome-momo.com/wp-content/uploads/2022/02/939f75f5f657587fcb3a681150fd5537.jpg)
春に(美星)天文台でお手伝いをしているときに、双眼鏡のターゲットとしてプレセぺ星団はご定番の星団です。様々な色の星が入り乱れ、宝石箱のようにとにかく美しい!お客さんも結構感動してくれます。ぜひ、双眼鏡で見てみてくださいね!
メシエ番号(NGC番号) | M44(NGC2632) |
属する星座 | かに座 |
種別 | 散開星団(d) |
赤経 | 08h40.0m |
赤緯 | +20°00′ |
光度(等級) | 3.7等級 |
視直径 | 70′ |
地球からの距離 | 600光年 (近年の観測で577年) |
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